急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「そのスタッフの男性本人に、一護の者が、酒をしこたま飲ませ聞き出した事ですが…。
聞いた時点で彼は御社の支社を既に辞めていて、郊外の豪邸を買い、三吉涼香さんと二人で暮らしていたそうですよ。
ふふっ…、よほど何か大きな収入があったんでしょうね」

ガタン!

山藤の容赦無い言葉に、池澤の体が揺れた。

「あ、言い忘れましたが…池澤さんがプールしていた独立資金…。会社のお金も随分流れていたんですよね」

「なっ!なんて事をしたんだっ!この馬鹿がっ!」


「本当に忌々しい悪女とは誰のことだか、もうわかったか?」

「は…はい…」
「申し訳ありませんでした」

大也が重々しく言うと、蚊の鳴きそうな声で池澤の父と兄が答える。

「謝るのは我々にではありません。さあ、それでは、亜里砂ちゃんへの慰謝料の件も含めて…さっさと誓約書を交わすことにしましょう」


湊の言葉に、池澤以外の二人はコクコクと頷いたが…池澤は青褪めた顔でぼんやりしたまま、どこか壊れてしまったように空を見つめ続けていた。

「亜里砂…」

池澤が空を見つめながら、口の中で小さく呟いた言葉に、この場の誰も気づくことはなかった…。



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