急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

◇◇◇

「三吉涼香さんに…私、ずっと恨まれていたんですね…」

亜里砂が悲しげに言った。

「彼女がミスした時の事…今でも覚えています。資料を直すのに二日間完徹で…あの時…泣きながら何度も『有難うございます』って…次の日、お菓子まで貰っちゃって…とても感謝してくれていた風だったのに…。『先輩、先輩』って凄く懐いて慕ってくれる可愛い後輩だと思っていたんです…。だから披露宴にも招待して…」

しゅんと俯く亜里砂の髪を大也が優しく撫でている。

話に夢中な亜里砂は、肩にまわっていた大也の手が、今や腰にまわり、さっきよりずっと近くに引き寄せられている事に気づかない。

もはや膝の上に乗せられていないのが不思議なくらいの距離もない距離で…話の途中で何度も「寒い、寒い」と言う大也の腕に、ぎゅぎゅうと囲われているのだが…。

自分が無意識下で、(猿団子あったか〜い、頭撫でられるの心地いいし、嬉しい〜)とホワホワしてしまっている事に、恋愛事に鈍い亜里砂は現段階で全く気づいていない。

大也にこれは『猿団子』だと既に言われているため、恋愛的なものだとは思いもしない亜里砂は、自分の体や気持ちが、何故こんなにも大也を拒否しようとしないのか…考えもしなかった。


「…ということは…最終的に三吉さんが、池澤の独立資金を、全部持ち逃げしてしまったという事ですか…?」

「そうだ。三吉涼香の運命の恋の相手とやらと一護の者が接触し、言質をとった後、再び連絡を取ろうとした時には、既に二人が買った郊外の豪邸は売却済みとなっていて、三吉涼香達の行方は全くわからなくなっていたそうだ」

「す…素早いですね」

< 165 / 217 >

この作品をシェア

pagetop