急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
再びコートを返そうとする亜里砂を止め、涼しい顔で大也が言う。
「冬の猿山で…」
「?」
「北風がピューと吹くと、猿達が身を寄せ合い固まって寒さをしのぐのを見たことないか?」
「ああ…猿団子のこと?」
「そう。冷静になって考えろ。一人でここに座っていた時と、俺とこうして座っているのと…どっちが暖かい?」
うーん、と亜里砂は馬鹿正直に考える。
「そりゃ、今の方が暖かいですけど…」
「だろ?それより、昨日あれからどうなったか聞きたくないのか?」
「聞きたいです!」
「あまり大きな声で出来ない話だからな、もうちょっとこっちに…」
「はい」
大也が内緒話をするように顔を近づけると、亜里砂は素直に耳を寄せた。
(どれだけ素直なんだ!簡単すぎだろ!お人好しにも程がある!
こんなだから池澤なんかに、強引に結婚まで持ち込まれたんじゃないか…)
そんな事を思いながらも、大也の唇は嬉しそうに弧を描いている。
「あれから…俺の執務室で……」
大也は昨日の顛末を、亜里砂に語り始めた。