急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「このバカップルが…。病室の前でいつまでも何やってるんだよ。さっさと入りやがれ!」

湊が呆れ顔で顔を出す。


入った病室は、亜里砂がいつか来た場所。

大也から「具合が良くない」と事前に聞かされてはいたが…病室に入って、以前会った時よりも酷く痩せて小さくなってしまった一護金持に、亜里砂は内心言葉を失う。


それでも金持は、大也と亜里砂の姿を見て破顔した。

「おお…よく来たな、亜里砂さん」

「ご無沙汰しております」

「うむ。此度は大変じゃったな。大也や美幸ちゃんから色々と話は聞いておるよ。体の方はもう良いのかね?」

「はい。完治とまではいきませんが、このように話すこともできるようになりましたし、お陰様で殆ど回復し、仕事にも徐々に復帰できています」

亜里砂は首に巻いたスカーフに触れながら答える。

首には池澤に絞められた痕が、まだくっきりと残っていた。

「そうか…良かった、良かった」

金持はニコニコと笑う。そんな金持に、大也が宣言をするように言った。


「祖父さん、亜里砂の怪我がある程度治るまではと考えていたので、報告が遅れてすまなかった。決められた納期を守れず…っと、そんな言い方は無いな、亜里砂はモノじゃないんだから。
早速だが、あの日の約束を今果たすぞ。
俺は結婚する。そしてこれが俺の嫁になる女だ。
俺はこの加納亜里砂ただ一人を、一生かけて心から愛し、大事にし、病めるときも、健やかなるときも、彼女の人生全部を預かり…何があっても守り続けていく覚悟をもって、ずっとずっと共に生きていくことを此処に誓う」

大也の誓いの言葉を聞いて、あの夜より明らかに痩せて皺深くなった金持の目に、少しだけ涙が浮かんだように見えた。


「うむ。わかった…」


金持は暫くして大きく頷き、ニコニコ笑うと「そういえば」と、大也を見る。


「大也、あの時言っていた…目に見えない不確かなものは、もう見つけられたようじゃの?」

「ああ、それはもう確かにここにある…」

大也は手を自分の左胸に当てる。

「あと…ここに…」

赤くなる亜里砂の肩を、もう一方の手でぎゅっと抱き寄せた。


「…そうか。だが…亜里砂さんの気持ちはどうなのじゃ?またあの時のように、大也が無理強いをしたのではあるまいな。大也はこう言っておるが…遠慮せず貴女の本当の気持ちを聞かせておくれ」

金持の問いに、亜里砂は真っ直ぐに彼を見つめた。

「私の気持ちをお話しする前に…以前、ここで大変失礼な態度をとってしまったことを、先ずはお詫びさせてください」

亜里砂は金持に深々と頭を下げる。

「良い良い。あれは全て大也が悪かったのだから」と笑う金持に、亜里砂も微笑んだ。


< 204 / 217 >

この作品をシェア

pagetop