急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
◇◇◇

その後、大也と亜里砂はベリーヒルズ総合病院から地下の通路を使ってベリータワーに戻り、『一護』専用エレベーターに乗り込んだ。

結論として…地下にムービングウォークはあったが、馬は走っていなかった。


「亜里砂、これを渡しておく」

エレベーターに乗ってすぐに、大也がぽんと小さな箱を亜里砂に向かって投げてよこした。

「え?」

「指輪だ」

「もう!本当にムードの欠片もないんだから!」

亜里砂がむくれながら箱を開けると、そこには見た事もないほど大粒のダイヤモンドがついたエンゲージリング。

「うわっ、嘘!大きい!」

「貸せ。嵌めてやる」

(ムードは欠片も無いけど…嬉しいな。ドキドキする…。ムードは本当に欠片も無いんだけどね)

頬を染めた亜里砂がそっと左手を差し出すと、その薬指に、大也がダイヤの指輪をするりと嵌めた。

「…指が重いわ…」

途端に亜里砂が眉尻を下げる。
物理的にも重いのだが、そのことで『一護の嫁』という重責が、一瞬、肩により重くのしかかった気がした。

「そんな顔するな。好きって言ってただろう?ダイヤ」

大也がニヤリと笑う。

「…っ!それは…好きですけど…」

(そう、好きになっちゃったんだから、もう後戻りはできないわ。後悔なんてしない!若様を幸せにするために頑張るって決めたんだもの)

それにしても…。

「どうしてこんなにサイズがピッタリなんですか?言ったことないのに」

「あーー…どうせバレるだろうから言うけど…それも例のカナのボディーチェックだ。
安心しろ、指輪だけじゃない。ウェディングドレスもジャストサイズでもう縫い上がっている。だから式までは絶対に太るなよ」

「山藤さんのボディーチェック⁉︎だって!あれはセキュリティのためだって!」

「あんなので騙されるのはお前くらいだろ。セキュリティチェックで、体のサイズなんて測るわけがあるか。まったく…心配になる程のお人好しだな」

大也が長い指で、亜里砂の鼻をきゅっと軽く摘んだ。

「なっ!!」


全部…全部、若様の掌の上だった!

山藤の『ボディーチェック』を受けたのは、一番初めに大也の執務室に呼び出された時の一度きり。

指輪だってドレスだってすぐには作れない。
だとすれば…あの時にはもう既に、大也は亜里砂と結婚する事を、勝手に確定事項として決めていて、その上で山藤に指示を与えていたのだ。

< 214 / 217 >

この作品をシェア

pagetop