急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
それよりも…美幸の顔が浮かぶ。
こんな事になるなら、走って逃げた方がどんなに良かったか!
(美幸さん、どうしよう!任務遂行出来なかったどころか…あんな醜態晒してしまって…!)
社会人として…もっと上手く立ち回る方法があった筈だ。
美幸にどれだけ迷惑をかけるかと思うと、吐き気がこみ上げてくる。

思わず喉元を押さえた亜里砂の胸に、さっき叫んだ自分の言葉が蘇った。

『結婚を冒涜しないで!』

あれは…二年前のあの日、あの人に言いたくて…胸にしまってしまった言葉…。
そして冒涜したのは私も同じ…。

『たった一人の相手を…心から愛し…大事にして…病めるときも…健やかなるときも…相手が死ぬまでの人生全部を預かって…守り続けていく覚悟も!責任感もまるでない男が!
軽々しく『結婚する』だなんて…口にするんじゃない!』

私は…覚悟も責任感も…神様に誓っておきながら、全部あの時放り出してしまった女だ。

大也に言った言葉は全て、亜里砂自身に返ってくるもの…。


心の中が大荒れに荒れたまま…次々とこみ上げる大粒の涙を流しながら…亜里砂はタワー8階のベリー・マリアージュ・サービスに、暗澹たる思いで戻ったのだった…。


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