急募！ベリーの若様が花嫁を御所望です！

「まあ…『8階の謎のマドンナ』と言われているような方ですから、しょうがないですかね」

「8階の…何だって？」

「謎のマドンナです。
毎日昼頃に出社し、エントランスに居合わせた男性達を騒がして気にも留めず…8階でエレベーターを降りる事だけは確認されているが、誰も彼女がどこの会社に勤めているのか知らない…。
エントランス以外のベリーヒルズ内で、誰も一度も彼女の姿を見た事などないのに…エントランスで彼女の姿を見た人達は、男性も女性も…なぜか強烈な既視感に襲われるという…」

「ぷっ！何だそれ！」

大也が盛大に吹き出した。

昨夜の…伊達眼鏡をかけて、わざと地味な化粧をし、髪の毛をギュッと纏め、鼠色のスーツを着こんだ亜里砂を思い出す。

アレが気配を消して、隅っこをコソコソ歩き回っていれば、どこの誰が気に留めよう。
ベリーヒルズ内で働く独身の男女の約7割が、ベリー・マリアージュ・サービスの何らかの会員であると聞いた。

であれば、その何割かはあの姿の亜里砂と何度か関わっていてもおかしくない。
既視感があって当然だ。