ご縁婚  お見合い結婚のはずですが、溺愛されています?

 ドレスも手を入れてもらって着るのが決まり、お式の装飾に引き出物、招待客への案内状の送付。

 あれこれと目まぐるしく準備に追われていると、招待客から参加の可否の返信が届き席次表の作成にも取り掛かることとなった。

 親族席と友人席、合わせて四つの雅貴さんの社会的な立場からしたら、考えられないほどにこじんまりとしたお式。
 もともと目立つことが苦手な私でも、大丈夫なほどのお式の規模にホッとしたのはもちろんだが、不安もあった。

 「雅貴さん。本当に、この規模のお式でいいんでしょうか?」

 そんな私の問いかけに、雅貴さんはあっさりと答えてくれる。

 「結婚式は花嫁のためのものだろう? 茉奈花は、豪華で招待客の多いお式が良かった?」

 その言葉にはブンブンと横に首を振って否やを示す。

 「そんなお式、耐えられない。出来れば、こじんまりとアットホームに落ち着いた式が良い」

 「なら、問題ないね。 式とは別に会社関係者を招いて披露宴だけ行うことになるから、それだけは付き合ってくれると助かるよ」

 そう、雅貴さんは会社役員なのである。
 会社関係に結婚をお知らせするには、規模の大きめな披露宴はやらざるおえないとご両親からも言われていた。
 そこは私も理解しているつもりだ。

 「えぇ、お式は私の望んだ形にしていただいてますから。披露宴は、頑張ります」

 そんな私の回答に、雅貴さんはキュッと抱きしめてくれる。

 「もう、披露宴に関しては申し訳ないけれど。座って挨拶だけ返していれば大丈夫だから。相手から挨拶に来てくれるしね」

 それはそれで逃げ場がないけれど、これも始めの一歩と思って頑張ろうと準備に忙しく立ち回ったのだった。
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