麗しの彼は、妻に恋をする
明日もあさっても好きは変えられないもんね。がんばるよ。


***


大きな一歩は、陶苑の妻としての一歩と決めた。

次に和葵の部屋に行った時、どこか行きたいところはないかと聞かれた柚希は「美術館に行ってみたい」と答えたのである。

陶芸の勉強ならそこそこしているが、他はよくわかっていない。こればかりは数多くの本物をこの目で見なければと思った。

「わかった」

彼はにっこりと微笑み、ちょうど行きたいところがあるんだと言う。

「早速出掛けよう」

「え? 今からですか? もう夕方の五時ですよ、閉まっているんじゃ」

「ナイトミュージアム。そこはね、八時まで開いているんだ」

背中に手を回しエスコートするように美術館の中を歩きながら、柚希の質問に、彼はひとつひとつ丁寧に教えてくれた。
レストランでの食事をして、部屋に戻ってから館内のショップで買ったカタログを広げてまた絵の話をした。

そして柚希は気づいた。
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