麗しの彼は、妻に恋をする

和葵に見せてもらったアルバム。
そこには柚希の知らない彼が沢山写っていた。

小学生の頃から制服を着て、日本有数のお金持ちの子だけが通える学園に通っていた彼。

――可愛かったな……。


「わかりました。離婚届けにサインします」

「そう。よかったわ」

柚希が書き終わるのを見届けると、彼女はどこかに電話をかけた。
内容から察するに、記事を取り下げるという話を進めているようだった。

「よかった。間に合ったわよ。離婚届はあなたが姿を消したのを確認してから、彼に渡すわね。
 贋作は私の手に入る。あなたの出方次第では、このことを訴えるのが私になるということを忘れないでちょうだい。
 私、気が短いの。早い連絡を待っているわ」

しっかりと脅すことも忘れず、彼女は帰っていった。

車が走り去りその音が聞こえなくなって、ようやく柚希は我に返ったように天を仰いだ。

「ふざけんなっ。小さい制服を着た可愛い彼は知らなくても、パンツ一丁でうろついている彼は知っているんだぞ! 彼はカメムシが苦手なことだってあんたは知らないでしょ!」

――彼は、和葵さんは……。
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