麗しの彼は、妻に恋をする
肩をすくめて明るく笑うマルちゃんは、推定年齢二十歳のおしゃれで可愛い女の子だ。

「よろしくお願いします」

「柚希さんの器、渋くてかわいいですねぇ。これはみんな益子焼なんですかぁ？」

「えっと、この柿渋の柄のものが俗に言う益子の土を使った益子焼で、あとはうーん。
　色々なところの土を使っているから、益子で作った陶器っていうことで」

「はーい。了解でーす」
マルちゃんはこういった個展に慣れているのだろう。
柚希の陶芸家としての経歴などを記した陶歴書なる小さなカードを見て、あれこれと質問を続けた。

「益子。私も陶器市には時々行きますよぉ。柚希さんも出店してるんですか？」

「はい！」

「今度覗きますね。どの辺なんですか？」

柚希は目印になるものをあげて、あれやこれやと説明した。

栃木県の益子町では毎年春と秋に陶器市が開かれる。全国から陶芸のみならず雑貨など日本中のクリエイターが集まってきて五百張り以上のテントが立ち並び、ツアー客やらバイヤーまでそれこそ大勢の客でごった返す一大イベントだ。
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