麗しの彼は、妻に恋をする
先立つものがあればなぁ、としみじみ思う。
柚希は今朝から何も食べていなかった。
個展の準備で忙しかったのもあって、この一週間食事らしい食事もしていない。今夜は都内の下町に住む祖母の家に泊まるので夕ご飯の心配はないが、それまではお店で出してくれた麦茶とお煎餅が命綱である。
――華子さんが言ったようにパトロンがつけば、こんな生活ともさよならできるんだけどなぁ。
白馬に乗った王子さまがどこからか現れて、
『なんて素敵な器なんだ! 僕が全部買って城に飾ってあげるよ。このカップでコーヒーを飲んだらどんなに美味しいだろう』
なんてことを言ってくれないものだろうか。
そんな真昼の夢をみつつ、ぼんやりと通りを見つめていた時だった。
チリリンと可愛いドアベルを鳴らして、スーツを来た男性が入ってきた。
ハッとするほど綺麗な顔をした、若くて素敵な男性である。
「いらっしゃいませ」
その男性は、雑貨には目もくれず真っ直ぐに柚希の器が並んだ展示コーナーへと歩いて来る。
――へ?
柚希は今朝から何も食べていなかった。
個展の準備で忙しかったのもあって、この一週間食事らしい食事もしていない。今夜は都内の下町に住む祖母の家に泊まるので夕ご飯の心配はないが、それまではお店で出してくれた麦茶とお煎餅が命綱である。
――華子さんが言ったようにパトロンがつけば、こんな生活ともさよならできるんだけどなぁ。
白馬に乗った王子さまがどこからか現れて、
『なんて素敵な器なんだ! 僕が全部買って城に飾ってあげるよ。このカップでコーヒーを飲んだらどんなに美味しいだろう』
なんてことを言ってくれないものだろうか。
そんな真昼の夢をみつつ、ぼんやりと通りを見つめていた時だった。
チリリンと可愛いドアベルを鳴らして、スーツを来た男性が入ってきた。
ハッとするほど綺麗な顔をした、若くて素敵な男性である。
「いらっしゃいませ」
その男性は、雑貨には目もくれず真っ直ぐに柚希の器が並んだ展示コーナーへと歩いて来る。
――へ?