北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-初日-
 累は確信している。
 失踪したときすでに高齢猫だったつるこは、そのあと老いらくの恋をした。
 最後の力を振り絞って産んだ子かあるいはその孫が、つるにこだ。だってつるにこは、つるこによく似ている。
 そしてきっとつるこは、この家がわりと安心できる場所であること、住んでいる人間もそこそこ無害であることを、娘へ、あるいはその娘へも、伝えてくれた。
 だから、つるにこはここに来てくれた。
 凛乃に話すと、否定するでもうなずくでもなく、やさしく微笑んだ。凛乃の手は器用に、つるにこのための段ボールベッドを作っている。
「ちっちゃいほうが安心して入ってくれますかね」
「うん。狭いの好きだと思う」
「お布団はふかふかのほうがいいかなー。でも柔軟剤って猫にはキツいのかな」
「ゆうべ巻いてたバスタオルでいいよ。それに一週間くらいはおれもここで寝て、自由に寝かせて慣れさせようと思ってる」
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