北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 つきあっている相手の母親の私物、あるいは遺品と呼ぶものを身に着けるのは、いずれ家族になる、という宣言と同義。
 すぐには結び付かなかった自分にとっては、ちょっとした発見だった。
 異論はない。けれど、押し流されているようでもある。
 あのフラワーアレンジメントのまえで立ち止まると、盛り上がっていた3人が累の存在を思い出した。
 つないだままだった手をそっと離す。
「じゃあ、楽しんできて」
 そういうことばが正しいのかわからないままに、凛乃を促す。
「累さんも、気をつけていってらっしゃい」
「いずれまたー」
「よろしくですー」
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