北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 にぎやかに笑い合いながら披露宴会場に向かう3人を見送ってから、累は足を速めて駅へ向かう。
 思い返すのは、質問攻めにあっていた凛乃の、自信なさげな反応。
 プロポーズを受けてくれる約束があるだけで安心していたのは、累だけだったということだ。
 あの場でも、プロポーズすることはできた。
 でもほったらかしておいてそれでは、凛乃をがっかりさせてしまう。
 そう思うと、急に胃が軋むような緊張を覚えた。
 凛乃の誕生日、1月だったはず。
 地下鉄のホームに立った累は、「プロポーズ」「方法」を猛烈な勢いで検索しはじめた。
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