北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 笑顔が伝染るという自覚のなさに、累はソワソワと座り直した。
「瀬戸さんにああいう態度なのも、理由がわかったよ。お父さんと系統が同じだもん、瀬戸さんて。だから照れちゃうんだよね」
「照れてない」
「はいはい」
 ぜんぜん信じてくれない凛乃に、仕返しのつもりで切り返す。
「じゃあ次は凛乃の家族を紹介してもらわないとだね」
「え」
 一段と表情が明るくなった凛乃を見てハッとした。
 これもまたプロポーズっぽい。
 よくないだろ、これは。
 喜ばせるのはいいけど、また流れで済ませてしまった。
 なし崩し感に脱力したとき、しばし忘れていた言造の陽気な声が戻ってきた。
「メリークリスマぁス!」
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