北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 油断していたところへの大声だ。つるにこが跳ね上がって、累の胸元めがけて大ジャンプした。
「ぐふっ」
 飛び乗られて倒れそうになるのを、とっさに背中へ伸ばされた凛乃の手が止める。
 反射的に身を乗り出したのはモニターの向こうもおなじだった。
 サンタクロースのコスチュームに白いヒゲまでくっつけてきた言造と、揃いのトナカイの角カチューシャをした金髪碧眼親子。
 距離も物理も超えて累を助けようとした4人は、互いの静止画を見るなり一丸となって笑い出した。
 胸にしがみつくつるにこの腰を抱いて、累はつられて少し笑う。
 もういいか、これで。
 投げやりじゃなく、そう思っていいような気がした。
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