北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「落ち着いてよ。財布は?」
「スマホあればだいじょうぶなはず」
「でも慌ててケガしたり事故に遭ったら困るよ。はい深呼吸」
 ふたりで息を合わせて、深く息を吸う。ありったけを吐き出すと、少し焦りがゆるんだ。
「えっと、なに買えばいいんだっけ」
 つい、頼りないことばがもれる。
それでも累は、狩猟に向かうハンターのような勇ましい顔で、キーボックスの自転車のカギをつかみ取った。
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