北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「これからどうしたらいいのかは調べればわかるんだろうけどさ、わたしたちはゆっくり合わせていこう」
「うん」
 累は凛乃の首筋に頬をすりよせるようにうなずいた。
「お義父さんたちに言うのは、病院行ってからね」
「おれもついていきたい」
「うん。いっしょに見たいよね、エコーとか」
 つるにこの妊娠経過を見てきた。相手の猫がとんと姿を見せないなか、歴代の妊婦猫たちをケアしてきた経験と自信があった。
 けれど自分事になると、まるで手に負えないような緊張が先立つ。
「いろいろ教えてね」
 凛乃が呼びかけたのは、いつのまにか足元に来ていたつるにこだ。
「にゃお」
 なんでも訊きなさい、とでも言うように、胸を張って応えるつるにこが、とても頼もしく見えた。

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