北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-とつきとおか-
 トイレから病室へ、えっちらおっちら戻る途中、凛乃は看護師に呼び留められた。
「ねぇ、旦那さん平気?」
 目線の先にいるのは、カート式ベビーベッドのなかの赤子を、間違い探しでもするようにジッと凝視している累だった。
「昨日も赤ちゃん見て固まっとったよ」
「あぁ」
 産後のむくみが抜けないおなかを押さえて、凛乃は苦笑いした。
「ずっと女の子が産まれるって信じ込んでたから、ふしぎでしかたないみたい」
「女の子が欲しかったん?」
「というより、そうにちがいないって思ってたんです。うちの猫が産んだのが女の子ばっかりだったから」
「猫?」
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