北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「へぇ」
 累はひとごとのように応える。
 でも昨日、総出でくり出してきた実家家族が口をそろえて、「お父さんにソックリ」「うちの血が感じられない」とウケまくっていた。
 この場合の“お父さん”は、もちろん実父のことでも義父のことでもない。
 ついでにいえば、累個人を指すというより、“お父さんになったひと”を指しているのだと思う。
「目、見た?」
「見たよ」
 その感想は言葉では出てこなかったけど、累はちょっと目を上げて凛乃を見返した。
 なんなら後陣痛やらなにやらでヘタっていた凛乃よりも長く息子を見つめている累が、なにも感じないはずがない。
 息子の瞳の色は、このきれいなハチミツ色とまったくおなじだった。
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