北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 怪訝な顔をした看護師は、気を取り直して凛乃の肩を叩いた。
「でもお父さんにはしっかりしてもらわんとね。産まれたのは実際、男の子なんやから」
「だいじょうぶですよ、あの顔はすごくかわいいって思ってる顔です」
 看護師が半信半疑の笑みで業務に戻っていき、凛乃はつくづく累を眺める。
 産まれた直後は、パパママ教室で抱いた赤ちゃん人形を見るような目をしていたけど、一晩経って累なりに整理してきたようだ。
 のっそりと近づき、ベッドフレームに寄りかかって声をかける。
「似てるでしょ、累さんに」
 一度は顔をあげたものの、累はすぐ息子に目を戻した。
「そうかな」
「耳とか」
「耳に似てるとかってあるの」
「あるよ。いつも見てるわたしが言うんだからまちがいない。けっこう顕著に遺伝するらしいし」
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