北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「いつ取りに行く?」
 急かすように食い気味に訊く。
「いえ、ミニ引っ越し便みたいなのをまた利用しようかと」
「ライトバンとか軽トラでも借りるほうが、たぶん安上がりじゃないかな」
「運転手のあてがないです」
「おれが運転する」
「ええっ」
「えっ」
 驚かれて、驚いてしまった。
「そんなに意外?」
「しかも軽トラって……瀬戸さんならイメージ湧くんですけど」
 思わず口をひんまげると、凛乃がくすくす笑う。
「そんな顔もするんですね」
 頬をつまむ勢いで凛乃の顔を引き寄せて、累は笑いごと飲みこんだ。
 こうなったら意地でも軽トラを借りてねじり鉢巻きで運んでやる、と心に決めて、まずは明日、トランクルームの残量を確認する約束を取り付けた。
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