北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
-小春日和-
「あれっ、めずらし」
 つるにこの姿しかリビングに見えなくて、凛乃は頓狂な声をあげた。
 あたりをぐるりと見まわしてみたけど、累はいない。
 回転座椅子の上で四肢を投げ出すように寝そべっていたつるにこは、ぴくんと耳を動かしただけだった。
 つるにこが上階の2部屋に立ち入り禁止なのは、そうでもしないと累がつるにこを断てないからだ。
 どこにだってついてくるし、累が手を伸ばしたかに拘らず自ら身体を寄せてくる。
 その誘惑は、納品締切より強い。
 したがって、凛乃がいない休日につるにこがひとりぼっち、なんてことは、信じがたかった。
 寄り道しないで帰ったのに、急ぎの仕事でも入ったかな。
 その休日にどうしても髪をいじりたくなってブランチ後にひとり出かけた分際だけど、なんだか置いてきぼりにされたような気分だった。
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