独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
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「葵、顔真っ赤になってるよ」

向かい合って座る須和はホットコーヒーを片手に、楽しげに笑っている。

「そんなに笑わないでください。だって……寒いし」

今は真冬の二月だ。表参道のオシャレなカフェに行くまではよかったのだが、
テラス席に座っているのは葵と須和だけ。

(あれ、私やっちゃったかな)

葵の『テラス席でお茶してみたい』という要望に須和が答えた形だったが、どうやら失敗だったらしい。“街並みを楽しみながら優雅にお茶を楽しむ”シーンを映画で見てから、憧れていたけれど。現実はそううまくはいかない。

そうそうに席を立つと、須和はおもむろに葵の手を握った。

「ほら、手が氷みたいになっちゃってるし。しばらくこうしてて」

「ありがとうございます……」

須和は葵の手を握ったまま、自分のコートのポケットの中に入れた。
その拍子に肩と肩がぶつかって、普通に手を繋いでいるより密着した形になる。

「葵ってホント天然だよね。可愛い」

そう言って微笑んだ須和の横顔に、胸がキュンとときめく。
あんなに寒い思いをさせてしまったのに、文句を言うどころか可愛いとまで言ってくれるなんて。
「ごめんなさい、なんとかなると思ったんですけど」

(でも、正直結果オーライかも……こんな風に寄り添って、
柾さんとオシャレな街を歩けるんだから)
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