独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
(まずは、冷蔵庫の生ものから捨てていかないとね。あとは賞味期限の近い在庫も)

今日で祖父の代から続いた六十年の歴史が終わる。

餡がたっぷり入った最中が天馬堂の一番の売りで、地元ではちょっとした有名店。

一時は二店舗目を出す計画が浮上したこともあったが、母の由紀子の死を受けて白紙になってしまった。

「お父さんたらこんなところにカップラーメン隠してるし。しかも賞味期限半年前……」

(ふふっ、ちょっと楽しくなってきたかも)

意識的に明るい声を出していると、気持ちも明るくなってくる。
元々辛気臭いのは嫌いな方だ。

バサバサと勢いよくゴミ袋に不用品を捨てていき、心なしか店も片付いて見えた。

(あとは、引き出しだね……この辺はシュレッダーにかけないといけないな)

店主であり、父親の利光と兼用で使っていたディスクに手をかける。

パートさんの履歴書、日誌などが次々と出てくる中、一冊のノートに目が留まった。

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