独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
葵は着替えを済ませると、深呼吸して心を落ち着かせる。

(よし、大丈夫。いつも通り普通に)

笑顔を鏡の前で作った後、葵は須和の前に姿を現した。

「須和さん、温かいお茶と、最近売り始めた私の商品です。よかったらどうぞ」

「ありがとう。……新作は生菓子か」

「はい。梅雨にちなんで三つとも雨をイメージして作っています。右から小雨で、翆雨……」

須和は葵の説明を興味深く聞くと、感心したようにため息をついた。

「さすが。お菓子で語らせるなんて粋だね。おじさんはなんて?」

「お父さんは相変わらず何も言ってくれないですけど、出すのはオッケーしてくれました。
お客さんには好評をいただいてるので、しばらくは店頭に並ぶと思います」

「そうか……」

須和は嬉しそうに目を細め、一口生菓子を口に運んだ。

「……うん、美味しい。葵ちゃんの作る餡は優しい味わいで本当に好きなんだ。
技術は上がってるはずなんだけど、初めて食べた時もそう感じたんだよ」

「須和さん……」

由紀子と三人で食べた日のことを思い出し、葵は胸が熱くなった。

「二年間の間で、葵ちゃんは本当に成長したよね。自信もついて、生き生きとしていて」

「!」

「君に甘えていいなんて言ったけど、逆に甘えてたのは僕の方だったのかもしれないな」
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