傷つき屋

父の仏壇に手を合わせて、俺は唱えていました。

"お父さん、またテスト百点だったよ。
お父さん、僕、すごいでしょ。
これで警察官になれるよ、少しずつお父さんに近づいてるよ。"

ただ、「マコトくんはすごいね」、その言葉に、「お父さんがいないのに」と微笑みながら続けたあの中1の時の担任のクソババアだけは、一生許しません。







中学3年になり、サッカー部を引退した僕は、普段からつるんでいたアキオについてゲームセンターへ行きました。

「マコト、塾行かなくていいのか?」

「ゲーセン、来てみたかったんだ」

僕よりもアキオの方が不安そうにしていました。
アキオは嘘をつくのが苦手で、本音が表情や仕草に出てしまうような奴だから、「優等生の友達をゲーセンに誘ってしまった悪い自分」に心がざわついていたのだと思います。



その時期のゲームセンターは制服で溢れかえっていました。

小学校の時は隣の駄菓子屋の前のベンチでコーラのキャンディを舐めながら、ゲームセンターに吸い込まれていく中学生たちがひどく大人に見えました。

ちょっと目が合うだけで、向こうはそんなつもりないだろうに、おこづかいを巻き上げられるのではないかとアキオは大げさに怯えて目を逸らしていました。

そんな大人の世界みたいな、ゲームセンターに、放課後こうして遊びに来たのが不思議でした。


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