エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「……千菜?」
振り返った貴利くんが驚いたように私を見る。
「どうしてここにいるんだ」
「春子さんのお見舞い。昨日の夜、メッセージ送ったのに読んでないでしょ」
「すまない。仕事をしていた」
「そうだと思った」
そう答えて、私は貴利くんの隣に腰を下ろした。
「春子さん、もうすぐ退院できるんだね」
「ああ。この前、中澤さんのご家族と面談して退院日の話をしたからな」
春子さんの主治医は貴利くんだ。図書館で倒れたときから入院中までとても親身になって担当してくれたと、春子さんの家族は貴利くんに感謝していた。
「ありがとう貴利くん」
春子さんがここまで回復できたのは本人のリハビリの頑張りもあるけど、貴利くんのおかげでもある。だから改めてお礼を伝えると、貴利くんは首を横に振った。
「俺は何もしていない。中澤さんの手術をしたのは俺の上司だ。だから中澤さんを救ったのは俺じゃない」
「……そこにこだわるよね」
少し呆れたように呟いてしまったのは、前に電話で春子さんの容態を教えてもらったときも貴利くんが同じようなセリフを言っていたから。