エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 貴利くんは雑誌を入れていた紙袋からA3サイズの用紙を取り出すと、テーブルに広げて私に見せる。


「マジですか……」


 そこにはすでに貴利くんの名前はもちろん、保証人の欄には貴利くんのお父さんの史貴さんと、私の父である玉蔵の名前が記入されている。あとは私が名前を書けばすぐにでも提出できそうだ。

 これはもうやばいのではないだろうか。

 うかうかしていたら本当にこのまま私は貴利くんと結婚してしまう。はっきりと断らないと。

 でも、嫌いだと告げても少しも動じる様子を見せないこの男に、果たして私の気持ちは通じるのだろうか。私には結婚する意志がないとはっきり告げたところで、それがどうした?と返されてしまう自分の姿が目に浮かぶ。

 貴利くんは一度決めたらまわりの意見なんて一切聞き入れず、それに向かってずんずんと突き進んでいくような人だから。

 そもそも貴利くんは本当に結婚相手が私なんかでいいのだろうか。

 恋人はいないの? いや、浮いた話が一切ないから史貴さんが心配して、こうして私との結婚が決まったわけだから、恋人はいないのだろう。

 
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