エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「しっかりと話をしないまま結婚をやめたりしてすまない。俺のせいで千菜の人生を振り回したくなかった」


 貴利くんが私との結婚をやめた本当の理由は三雲先生から教えてもらったからもう知っている。

 どんな言葉を返そう。いろいろと迷いながら、でもやっぱり一番知りたいことを聞いてみる。


「貴利くんは私のこと好き?」


 しっかりと目を見つめてそう問い掛けると、貴利くんは一瞬だけ大きく目を見開いた。でも、すぐにはっきりと答えてくれる。


「もちろん。千菜のことは好きだ」

「私も貴利くんが好き。だから、私もアメリカ行くよ。貴利くんと一緒にいたいから」


 お願い連れて行ってと隣に座る貴利くんの腕を掴めば、彼は少し困ったように笑った。


「俺も千菜と一緒にいたい。でも、千菜には日本にいてほしい。仕事が好きなんだろ? 俺のために辞めることはない。千菜には千菜の人生がある」


 そう言われて黙ってしまう。

 私の人生……。

 子供の頃から図書館で働くのが夢だった。それが叶った今は毎日仕事が楽しい。この先もずっと続けていけたらいいなと思っていた。

 貴利くんはそんな私の気持ちを思って、私をアメリカには連れて行きたくはないのだろう。

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