エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「俺が遅れてきたから怒っているのか?」


 無言で抱きついているとそんな私を気にしてか、貴利くんは私を抱き締める腕の力を少し弱める。そのまま顔を覗き込まれた私は、貴利くんの胸に顔を押し付けた。


「怒ってるよ。貴利くんが私との結婚やめたりするから」


 静かにそう告げたら、貴利くんの身体がピクッと跳ねた。


「千菜……」


 少し困ったような声が聞こえると、貴利くんがゆっくりと私の身体を離す。


「とりあえず中に入ろう。ここは寒い」


 それから私たちは貴利くんの部屋に入った。

 でも、しばらく家には帰っていなかったのかリビングもひんやりとしている。エアコンの暖房を入れると少しずつ暖まってきた。

 仕事帰りで疲れているのに貴利くんがコーヒーを出してくれたので、ソファで隣り合わせに座りながらそれを飲む。

 お互い何も喋らずに沈黙が続く。

 話がしたくてここへ来たのに、貴利くんを目の前にすると何から話を始めたらいいのかわからなくなった。

 でも、いい加減にこの沈黙もつらい。何か話さないと……。


「千菜。俺は来年の四月からアメリカへ行く。三雲から聞いたんだよな?」


 先に話を切り出したのは貴利くんだった。私は静かに頷く。

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