エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
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その日、仕事を終えたのは午後五時だった。
港町図書館の閉館時間は午後八時だけれど、早番と遅番に別れて勤務しているため、早番の私の退勤時間は午後五時なのだ。
それもあって私が館長のお見舞い担当に抜擢されてしまったんだけど。
「えっと。館長が入院している部屋は……」
港町総合病院は地下一階から八階まである巨大な病院で、私が今いる一階には受付、各診療科の外来、救急外来、それに売店やレストランなどがある。
フロア図を確認していると、二階には内視鏡室やリハビリテーション室などがあり、三階には手術室、集中治療室、病院長室、総合医局などがあるそうだ。
四階から七階が入院病棟になっていて、確か館長のいる部屋は五階。そこへ向かうため、少し離れた場所にあるエレベーターホールへと移動する。
土曜日のこの時間だと診療時間はすでに終わっているので院内にはあまり人がいない。時々、私と同じように面会に来た人や、看護師や医師といった病院関係者とすれ違うだけ。
白衣を来た人物を見るたびにビクッとなるけれど、貴利くんらしき人物には遭遇していない。