エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
‟いつまで泣いていれば気がすむ。人はいつか死ぬと決まっている。それが遅いか早いかどちらかだ”
九年前、祖母を亡くして悲しむ私に冷たい言葉を放った貴利くん。
きっと今頃は、患者やその家族に寄り添えない最低な医者になっていると思っていた。でも、泣いている男の子の頭を撫でる貴利くんはとても頼りになる医者の姿に見えた。
貴利くんに優しく励まされて安心したのか、しばらくすると男の子に笑顔が戻った。
すると、受付の方から女性が来て、男の子に声を掛けている。母親だろうか。彼女は、貴利くんに頭を下げると、男の子と手を繋いで入口へと向かった。
途中で男の子が振り向いて貴利くんに手を振ると、貴利くんもまたそれに手を振り返している。そして、男の子と母親は病院を後にした。
それを見届けた貴利くんが、くるんとこちらに振り向いたときだった。彼とは距離を取って立っていたものの、貴利くんの視界に入ってしまったようだ。
私を発見した彼の目が大きく見開かれる。
見つかった。
やばい。
逃げよう。
けれど、少し歩いたところで、低い声に「千菜」と呼び止められてしまう。