エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 ……えっ、なにこの体勢。

 引き寄せ方は少し強引だったものの、貴利くんに私は今抱き締められているのかもしれない。密着している互いの身体に動揺して、私は思わず動きをピタリと止めてしまう。

 男の人に抱き締められるのは初めてじゃない。元彼のかけるにもよく自分から抱き着いていたし、そんな私をかけるがさらに強い力で抱き締め返してくれていた。

 それなのに、まるで初めて男の人に抱き締められたときのように緊張してしまうのは、きっと相手が貴利くんだから。

 お堅い性格の彼は、女の人に対して気軽にこんな行動を起こすような人ではない。ましてや相手は私だ。

 突然どうしたのだろう……。

 じっと身体を硬直させていると、私の頭を自分の胸に押し付けるようにして抱き寄せている貴利くんからはトクトクと心臓の音が微かに聞こえてきた。


「千菜」

「は、はい」


 密着した状態のまま名前を呼ばれて、動揺からか声が裏返ってしまう。


「俺は――」


 貴利くんが何かを言い掛けたとき、彼の胸元からブルブルと振動音が聞こえた。

 すると、私の後頭部に回っている貴利くんの手の力が弱まったので、私はすぐに彼から離れて距離を取る。

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