蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


暫く大ちゃんの鼓動を聞いていると


「煽ったのは蓮だよ」と突然聞こえた声


「ん?」


意味も分からず顔を上げると
ソファの上から抱き上げられた


「キャ」


いきなりの浮遊感に
大ちゃんの首にしがみつく


「約束、な」


そのまま寝室へと移動した大ちゃんの向こう側で
少し重い寝室の扉が閉まった音がした


『寝室は防音なんだよ、寝る時は静かなのがいいからね』


そう聞いた時は繊細な大ちゃんだからと思ったけれど

大ちゃんの部屋は外の廊下との間の扉も
寝室とリビングを繋ぐ扉もオートロック式

だから家族だって解除しない限り入れないし
間違っても誰かが入り込むことなんてない


とすると・・・


考えを巡らせる私の耳に


「・・・聞こえた?蓮」


大ちゃんの声が飛び込んできた


「え?」


「聞いてなかったの?」


「あ、うん。ごめんなさ、んんっ」


ベッドの上に座っていた私の頬を両手で挟んだ大ちゃんは
言葉を遮るように口付けた


「・・・んっ、っ」


呼吸すらまともにできず
落ちていく意識の中で


「約束」という二文字だけが頭に残った


「可愛い」


時折、僅かに離れた唇から聞こえる大ちゃんの声は甘くて


水音が立つほどの口付けに合わせるように
身体から熱が生まれる


制服の裾から滑り込む大ちゃんの手を
止めようとするけれど

力を無くした腕は何の役にも立たずシーツへと落ちる


「・・・っ、ハァ・・・ぁ・・・ん」


私の荒い呼吸だけしか聞こえない空間に



「蓮」



「愛してるよ」



「蓮」




大ちゃんの声が甘い鎖のように絡まって五感を狂わせた












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