蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



日傘をさして砂浜を歩くだけで
モワッと上がる熱風に溶けてしまいそう


別荘地専用ビーチを過ぎると
海水浴客が増えてくる

屋台がある所まで
ただ歩いているだけなのに

もの凄い視線を集めている気がして不安になってきた

手を繋いで歩いてくれている大ちゃんに少し近づいて視線を避ける

そうしながら自分の姿を確認して
おかしなところがないかチェックする


「どうしたの?」


もちろんそんな挙動不審な私に気づいた大ちゃんは歩きながらも首を傾けて気にしてくれる


「ん・・・と」


「ん?」


「凄く、見られているから
どこか変かな?って気になったの」


「・・・クッ」


「・・・え?やっぱり、どこか変?」


「違うよ、蓮が可愛いから
みんなの視線を釘付けにしてるだけだよ」


「・・・っ」


いつもながらの大ちゃんの過剰評価に
顔にグングン熱が集まる

けれどこれが暑さなのか熱なのか
最早、判別不能なくらい太陽にやられている


こういう時はサラリと聞き流せるのが
淑女の基本だったはず

ぎこちなく微笑みを作って
返事をしないまま歩くことに集中していれば


クスッと笑った大ちゃんは


「蓮は可愛い」


甘い声で囁いて日傘をさす私をそのまま抱き寄せた


「・・・っ」


急なことに驚いている間に
日傘は大ちゃんの手に渡り

腰に回された大ちゃんの腕によって
ありえないほど密着した身体と歩きにくさ


抗議するように顔をあげると


首を傾けた大ちゃんの顔が近づいて
チュッと唇にリップ音が立った


「隙あり、ご馳走様〜」


そう言って大ちゃんクスクス笑って


「蓮はイチゴ?」なんて

見えてきた屋台へ視線を移した







・・・・・・暑い




いや・・・・・・




え?





モォーーーーーーっ





大ちゃんには敵わない







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