蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


side 大和



「・・・あの、ね?」


そう言った蓮は
次の言葉を飲み込んでしまった


間近で見つめる蓮の瞳から
どんどん光が消えていく


きっと悪い方へ思考を巡らせている


それに気付いて


深い闇に陥いる前に呼びかけた


「蓮」


虚な瞳は不安な気持ちの表れで
それもこれも俺の所為だと胸が苦しくなる

蓮を不安にさせたい訳じゃなかった


・・・反面


俺だけを思ってくれることに
喜びさえ感じる矛盾



蓮との繋がりをもっと強くしたかった

子供みたいな考えは
どこまでも身勝手で

それでも

存在を無視され続けた俺のトラウマは
完全には消し去れなかった


ただただ・・・俺の独占欲



ダム湖畔の別荘で過ごした
夏休みの後半から


蓮の承諾を得ずに避妊するのをやめた


だから、最近の蓮の不調は
俺にとっての思惑成功を意味する


「蓮。ありがとう」


そう言ってオデコに口付けると


「・・・え」


驚いたように視線を合わせた蓮の瞳は
いつものように光が戻っていた


「産んでくれるんだよね?」


「・・・っ、大ちゃん」


「ごめんね、不安にさせた」


「ううん」


「妊娠初期は眠気も起こるらしいよ」


「そう、なんだ」


「二人の赤ちゃんだから
二人で乗り越えていこう」


「うん」





なぁ、蓮



これが計画的だったなんて知ったら
君はなんて言うんだろう





side out









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