蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



「・・・大ちゃん、大ちゃん」


蓮の声に意識が浮上する


重い目蓋を開くと


「・・・大丈夫?」


間近に眉を下げた蓮の顔が見えた


「・・・ん?」


「怖い夢、見てたの?」


「え?」


「魘されてたよ、大ちゃん」


「あ・・・あぁ」


苦しい日々を夢に見るなんて
蓮と再会してからは無かった


「平気?」


「あぁ」


「ほんと?」


「蓮が側に居てくれたら大丈夫」


「そっか。じゃあ大丈夫だね」


そう言って安心したように笑う蓮を腕の中へ閉じ込めた


「大ちゃんあったかい」


「蓮も」


「そう?」


「あぁ。いつもよりね」


「じゃあ大ちゃんのお陰だね」


穏やかな蓮の笑顔を見ていると
夢に出てきたあの時の花を思い出す


抱きしめる腕の中から匂うのは


紛れもないあの花の香り


「蓮、愛してるよ」


「・・・っ。私も愛してる」




・・・







美しくて儚いその花の下は




生きるための根を受け止め続ける深い泥




その花からは想像もつかない世界は俺




他を寄せ付けないその上で




蓮を受け止め咲かせ続ける




一生、美しく咲き続けるように



一生、誰にも手折られないように




花弁が落ちて泥に埋もれるその日が来るまで







狂おしい程の愛を








君に捧ぐ















fin















< 159 / 160 >

この作品をシェア

pagetop