蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「「ありがとうございました〜」」


可愛らしく手を振った二人


「あっ」


急に吹いた強い風に
アリサちゃんが手に持っていたプリントが宙に舞った


それに手を伸ばして追いかけるアリサちゃん

それはコマ送りの映像のようで目が離せない


そして、その先には


交通量の多い大通り


・・・危ないっ


そう思った時には身体は動いていて

迫る車が視界に入ったと同時にアリサちゃんを腕に抱き込んで反転



キキキキーーーーーーーードンッ





「キャーーーーーーーーっ」



「レンちゃーーーん」







背中に強い衝撃が残った







□□□








ツンとした消毒液の匂いに意識が浮上する


・・・・・・んと


どうしたんだっけ?

微睡む意識を覚そうと
重い目蓋を必死で開ける


・・・確か・・・
同じ風景を覚えている


視界に飛び込んできたのは
岡部さんと白い天井だった


「良かった、気がついたね
背中打ってるから絶対に起きないで」


「はい」


「蓮ちゃん、二週間振りね
今の気分はどうかしら?」


「・・・気分は悪くありません」


「身体はどんな感じ?」


「ん・・・と」

寝たまま少し身体を動かしてみる
途端に走る鈍い痛みは背中側

手も足も少しずつ揺らしてみる

肘と腰と膝に痛みがあるのは全て右側


「痛いところばかりのようです」


前回と違って背中は痛すぎて動けそうもない


「蓮ちゃんが寝てる間にMRI検査も終わってるんだけどね
幸運なことに骨は折れてなかったわ
背中と腰は打撲、右の肘と膝は転んだ拍子の擦過傷ね
気分が悪くなければ蓮ちゃんに会いたい人が列を成しているのよ」


「会いたい人?」


「そう、先ずは警察ね」


「警察?」


「事情聴取ってやつね、これは
拒否出来ないから大丈夫そうなら呼ぶけど」


「じゃあお願いします」


「大丈夫、私も付き添うからね」


「ありがとうございます」

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