蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「疲れたか?」


アリサちゃん家族と小学校の先生チーム

寝ながらの対応だったのに
身体は白旗を上げていた


少しずつ微睡む私に


「東美の先生にも連絡したら
明日来るって言ってたよ」


「へ?」


祖父は目の覚める一撃を放った


「岡部さん、蓮は入院だよな?」


「そうよ、蓮ちゃん
まだ安静だし、動けないだろうから
暫くは入院することになるのよ?」


「・・・・・・え」


背中が痛いのも少し休めば動けるかと簡単に考えていた


「じゃあ蓮、ワシは一先ず帰って
蓮の入院の準備をして来るから」


「準備って?」


祖父の家には着替えも殆ど置いていない


「岡部さんに書き出して貰った」


そう言ってメモ用紙を見せてくれた


[コップ、お箸、スプーン
歯磨きセット、シャンプー、リンス
浴用タオル、ハンドタオル、ティッシュ]


そこには祖父でも揃えられる物ばかりが並んでいた


「シャンプーは蓮の好きなやつ持ってくる」


祖父の家に予備もあるほど好きなシャンプー


「ありがとう」


「お安い御用だ」


そう言うと「行ってきます」と手を振って扉を出て行った


「優しいおじいちゃんね」


「はい、私には祖父しかいないので」


「そっか、じゃあ早く良くならなきゃね」


「はい」


「身に着けるものは私が揃えるから」


心配だった下着のことは岡部さんが用意してくれるという


「で」


「?」


「蓮ちゃんに会いたい四人目
身体が辛いようなら断るけど?」


「・・・」


どうしよう。
確かに身体は少し辛くて休みたい

でも、これまでの流れからいくと
この事故に関係する人に違いない

・・・となると

打つかった車の運転手さん


向こうも突然の事故でパニックかもしれない


ちゃんと謝らなきゃ


「お願いします」


「じゃあ、呼ぶね」


「はい」


扉に向かう岡部さんの背中を見送った




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