蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


病気入院じゃないからと
ヒロさんにお弁当を頼んでくれたのは飛鳥さんで

和哉さんとヒロさんも一緒に四人でテーブルを囲んだ


途中、橘院長と岡部さんも参加して
寂しかった病室がパーティー会場のような空間になった


「しかし・・・なんだこの弁当は
統一感ゼロじゃないか」


文句を言いながらも箸が止まらないのは橘院長


そりゃそうだ
ヒロさんの特製四段重には
おにぎり、いなり寿司、ナポリタン
ポテトグラタン、青椒肉絲、生酢
タコさんウインナー、オムレツ、煮豆
筑前煮、焼き鳥、竹輪の磯辺揚げ
ポテトサラダ、キャベツと胡瓜の浅漬け
そして・・・手作りスウィーツの段

私が昔好きだと言ったものばかり詰められているのだから


嬉しくて、懐かしくて、温かくて

折角の団欒の雰囲気を壊すと分かっていながらも
堪えきれない涙を溢しながら食べる私を

みんなは優しく笑って見逃してくれた





食べ終わって涙が止まると


「蓮ちゃん、トナカイみたいよ」


「「ブッ」」


泣き過ぎて鼻が赤くなった
ブサイクな顔を盛大に笑ってくれて


やっぱり幸せで泣いてしまった



そして・・・


ヒロさんが紅茶を用意すると、飛鳥さん以外は「またな」と病室を出て行った


「今日は疲れたでしょ」


飛鳥さんはベッドのリモコンを片手に背もたれを起こしてくれた

そのままベッドサイドに腰掛けた飛鳥さんへと視線を合わせる


フワリと微笑んで頷いてくれたのを確認して


死ぬまで言わないつもりだった話をする覚悟を決めた









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