蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜



朝から濃厚な口付けに腰砕けになった私を


「良い子だ」


揶揄うように頭を撫でて
「蓮、好きだ」と甘く蕩けさせる大ちゃん


確か昨日の私はまだ躊躇っていたはずなのに・・・


その過ぎる想いまで見透かすように


「蓮は俺と一緒に居ればいい」


ちゃんと答えをくれる


小さな頃からずっと一緒だった距離感は

六年離れたくらいでは無くならないことを知った


「大ちゃん、学校?」


制服を着ているから
そうに決まっているのに


「あぁ、蓮が朝ごはん食べるまで
一緒に居ようと思って」


学校の前に態々来てくれた意味も知りたい


「大ちゃんは食べた?」


「あぁ、てか、ちゃん付け止めろ」


「・・・だって」


「言ってみ、じゃねぇと
お仕置き考えるからな」


「ゔぅ」


唇を尖らせてみたけれど
少し睨んで見える視線に負けた


「・・・大・・・っ」


「もう一度」


「・・・大」


「上出来」


そもそも大ちゃんの名前は“大和”
それを幼稚園の時に

『れんちゃん』って呼んでくれるのに合わせたくて
『やまとちゃん』て呼んだけれど
三文字の名前は呼び難くくて苦戦してた

そんな私を見かねてか飛鳥さんから『大和の大を“だい”って呼べばちゃん付けにピッタリね』
って漢字のマジックを教えて貰ったものだった

それを知った幼稚園のお友達が
『大ちゃん』って呼ぶと
それはもう悪魔に変身したかのような怖い顔をして

『大ちゃんって呼んで良いのは
蓮ちゃんだけだー』って怒っていた

だから『大ちゃん』呼びは私だけの特別だった


「フフ」


「ん?どうした」


「幼稚園の頃に大ちゃんって呼ぶようになった頃のことを思い出したの
他のお友達が大ちゃんって呼んだら
こーんな顔をして大ちゃん怒ったよね」


人差し指で目尻を釣り上げると


「蓮、お仕置きな」


大ちゃんはニヤリと笑った




< 54 / 160 >

この作品をシェア

pagetop