蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


「和哉、車椅子」


「承知」


いつものようにお庭へと出た


「飛鳥さん」


「ん?」


「大ちゃんと話せました」


「・・・良かった」


「六年前と変わらずいてくれて」


「だから言ったでしょ?」


「その想いに応えていいものか悩んだんですけど
悩むより先に答えは出ていて・・・
大ちゃんの未来を考えて離れた癖に
大ちゃんの未来が欲しいって欲張りになってしまいました」


「蓮ちゃん、ありがとう」


「こちらこそ、飛鳥さんが話してくれたお陰です」


「ううん。元から離れちゃいけない二人だったのよ
それをダニが邪魔したから・・・」


「・・・ダニって」


「フフフ、ダニじゃなければ
寄生虫でも良いわよ?」


戯けた飛鳥さんの話に
いつしか声を上げて笑っていて


穏やかな時間は過ぎていった




□□□




飛鳥さんが帰ると直ぐやって来た大ちゃんは

私服に着替えていて


Tシャツにチノパンと薄手のジャケットというラフなスタイルなのに

見惚れるほどカッコいい


「どうした?」


「・・・ん、と、カッコいいよ?」


頑張って声を出してみたら
一瞬固まった大ちゃんは「反則」と
私を抱きしめた


「ちょ、苦しいっ」


「あ、悪い、痛かったか?」


「まだ少し背中は痛むの」


「そうか」


「肘と膝は瘡蓋になってきてるから
痒みを我慢してるんだけどね」


「なぁ、蓮」


「ん?」


「週末の退院だけどな?」


「うん」


「院長が言うには退院してもいいけど
日常生活が普通には出来ないだろうから
自宅療養のリハビリ通院ってことらしいんだ」


「・・・え、そうなの?」


「あぁ、だからな?」


「うん」


「怪我をさせたのはうちの車だから
蓮をうちで預かることにした」


「・・・・・・・・・へ?」





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