蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜


大ちゃんの口調は三通りある


再会した時のような
『礼には及びません』なんて
固い言葉を使う時と


『全部俺に任せてくれたら
蓮の悪いようにはしねぇ』なんて
カッコいい話し方と


小さな頃からの口調
『俺に出来ないことはないよ』って
一人称は“俺”になったけれど
柔らかな話し方がある


他人と話す時は固い話し方が多い

有無を言わせない時はカッコいい話し方で


私と話す時は柔らかなことが殆どで
強引な場合だけカッコ良くなる


全部好きだけど・・・
やっぱり一番大ちゃんらしいのは
柔らかな話し方だと思う


再会してからは
柔らかな中にも強い意志みたいなのが感じられることもあって

会えなかった六年間に
男の子って変わるんだなぁって思った

あ、一番変わったのは
大ちゃんの声が低い大人の声になったことだった


そんなことを思いながら
紅茶を用意してくれるという大ちゃんを眺めていると


「穴が開きそうだけど」


トレーを持った大ちゃんがソファの横に座った


「ご、めん、ね?」


大ちゃんのことを想っていたから
知らないうちに見過ぎていたのかもしれない


「謝らなくていいよ、蓮に見られるの
嫌いじゃないからね」


微笑んでくれるから
またひとつ胸がキュンとなる


大ちゃんは私を好きにさせる名人だ


「ん?」


首を傾けて顔を覗き込む大ちゃん
その仕草さえカッコ良くて


「大ちゃんが好き過ぎて困ってる」


少し口を尖らせてみれば


「モォーーー蓮は俺をどうしたいの?」


「キャッ」


また腕の中に閉じ込められた


「好きなのは俺も同じだよ?
だって、ほら」


そう言うと腕を離した大ちゃんは
私の手を取ると胸につけた


「あ」


「蓮の側に居るだけで
ドキドキして死にそうだよ」


触れた大ちゃんの胸は筋肉質で固い
そこからドクドクと早い鼓動が伝わってきた





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