無名ファイル1

「…顔、怖いよ。何焦ってんの?」

違うよ…本当に焦ってるのは、

「焦ってるのは魅香だろう?
何を誤魔化そうとしてるんだ。」

蛍の手に込める力が少し強くなった。

私は愚かなことに何か繕う言葉を、

頭の中の辞書をぶちまけて…捲って、

血眼になって…彼への言葉を探した。

「…そう、思う?」

ただ、彼に正直に事実を話せば、

それで良かったというのに。

幸せを逃がさぬよう…零さぬようにと、

目的を見失ってしまった私に、

彼の冷たい視線は痛いほど突き刺さる。

「思うから…勝手に確かめる。」

蛍は私の顎をグイッと持ち上げ、

噛みつくように口をつけた…。

口の中に熱を持った彼の舌の感覚。

柔らかくて…惚けてしまいそうになる。

「…んっ、んぅ!!んーっ!!」

我に返って彼の胸板を押すも、

体格差のせいでびくともしない…。

…頭がふわふわしてきた。

「んんぅっ…!!」

膝がカクカク痙攣して、心臓が痛い。

死んじゃう…目がチカチカする…!!

「ンッ!!」

「はぁっ…はぁ…はぁー…」

やっとのことで距離を取ると、

彼は俯いて口元を手でおさえていた…。
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