無名ファイル1
「さて、劇の練習しますか!!」
「あぁ、まだ完成してないからな。」
私達は劇の台詞や動きの確認を、
数時間ほど黙々と練習した。
元々、二人して完璧主義な為、
細かい立ち位置確認に熱中していた。
『ギィィィッ』
「また二人でこんな所…に」
丁度ラストの見所…キスシーンの、
立ち位置を二人で熱く議論していた時、
運悪く華美ちゃんがやってきた。
『あっ…』
三人の声が重なる…。
体を密着させている兄と彼女を見た妹。
最悪な構図だ…しかも華美ちゃんは、
純粋な小学五年生ですよ!?
男女の関係についてこの一件で、
もしトラウマになってしまったら!?
「あー、ごゆっくりぃ~。」
『ギィィィッ…パタン』
「ちっ、違うのぉ!!華美ちゃん!!
ごめんなさい!戻ってきてぇぇえ!!」
地下の防音室…勿論向こう側には、
私の叫び声は聞こえなかっただろう。
結局華美ちゃんには戻ってきてもらい、
必死で説明と謝罪をした…。
「いや…むしろ邪魔してしまって、
本当にごめんなさい…気を付けます。」
なんて真面目なんだッ!!
そうして劇の練習を重ねた二人だった。