無名ファイル1

Part5.文化祭の物語


順調に文化祭の劇の準備も整い、

とうとう文化祭前日となった。

クラスの全員で衣装や音響、照明、

台詞に立ち位置、話のテンポに流れ、

全ての項目の最終チェックを終えた。

『よし、明日は成功させるぞォ!!』

『おぉぉぉおっ!!!』

みんないい顔をしてる…きっと私も。

ドキドキ胸が高鳴っている…。

明日の今頃はこの体育館の舞台で、

沢山練習した演技をしているんだ…。

温かい照明の中、影が近づいてくる。

手を差し伸べて少し首を傾げる…。

「俺と踊って頂けませんか?」

「喜んで…」

ヒューッ!と観客席の方から聞こえる、

賑やかなクラスメイトの拍手喝采…。

『ハッピーエンドはまだ早いぞ!
一目惚れ拗らせバカップルゥ!!』

「ははっ、うるっせぇ!!」

軽快な音楽にステップを踏みながら、

蛍が観客席に向かって言い返す。

その会話に周りも笑顔になる…。

なんて温かいクラスなんだろう。

その時、私は気が付けなかった。

暗い観客席の方の端に一人、

私を冷たく睨む視線があることに。

その一人の行動により明日の本番が、

窮地に追い込まれるということも…。
< 141 / 200 >

この作品をシェア

pagetop