御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
――見て見ぬ振りをするのは簡単だ。けれど、後から来る罪悪感にずっと悩まされることになるんだぞ。

昔、妹が母の大切にしていた花瓶を割ってしまい庭に埋めたことを知りながら黙っていたのがバレて、そう言って父に咎められたことがあった。だからまっすぐに生きることを教えてくれた両親に背くようなことはできない。

よし!

私はスマホをバッグに押し込むと、見失わないうちにその男性の後を追いかけた――。

男性に後をつけていると知られないように人の影に隠れながら会場を出る。すると男性は後ろめたい事があると言わんばかりに早足でロビーを抜けて、エレベーターを使わずに人目につかない階段の方へ向かって行った。

ひとりで危険なことに首を突っ込んでいることはわかっているけれど、あの女性の財布を取り返すことができれば……。

男性はひょいっと廊下の角を曲がり、私も焦る気持ちを押さえながら角を曲がったときだった。

「痛っ!」

一瞬、停電かと思うくらいに目の前が真っ暗になり、顔面にドンという衝撃とともに激痛が走った。

「君、なに?」

「え……」
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