御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
パーティーで唯一楽しい時間を一緒に過ごしたあの彼が、私の横で心配そうに私の顔を覗き込んでいる。もう二度とお目にかかれないと思っていたのに。

私、まだ夢を見ているのかな。

「膝を擦り剥いていたようだったから手当してもらった。ほかに痛むところはあるか?」

どうして彼がいるの? っていうか、ここはどこ?

「……平気です。少し頭が痛いけどたいしたことないです」

「そうか、でも無理はするなよ」

「はい」

どうりでふわふわと気持ちがいいと思っていたら、私は真っ白なシーツの敷かれたダブルベッドに寝かされていた。改めて部屋を見ると、クリーム色の壁には高そうな絵画が飾られていて、大画面の液晶テレビにクラシックなソファーとローテーブル、クローゼットが置かれていて、小さなキッチンまである。

まるでホテルのスイートルームみたいだけど……。

「ここはベリーヒルズビレッジにあるメディカルセンターだよ」

「え……」

メディカルセンター? ってことは、ここ病院なの?

ベリーヒルズビレッジのメディカルセンターの病室は高い部屋で一日あたりうん十万もする高級病院だ。病気や怪我をしたってそう簡単に診てもらえる所じゃない。

蓮さんの意外な答えにきょとんとしてしまう。

そんな場所にどうして……。

そうだ! 財布泥棒を追いかけて、追い詰めたと思ったら階段から落ちたんだ。
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